田んぼの植物調査(農村力デザイン大学講座)

農地の生態調査は、植物についても行っています。

池田の田んぼには、絶滅危惧植物も生息していて、専門家の先生からも注目されています。
平成19年10月の調査では、日本農村力デザイン大学の講座と連携して研修会が持たれました。

 

田んぼの絶滅危惧植物調査を行う研修会には、
池田の郷(さと)水と土を守る会の推進委員や、
7月に行われた田んぼの生き物調査の参加者など19名が参加しました。

はじめに、講師の赤井賢成氏(福井県土地改良事業団農村環境研究所)からレクチャーを受けました。
水田の雑草の定義~生態~絶滅危惧植物の現状、他生息域など、
写真や地図、実物サンプルを駆使したお話で、かなり専門的な内容でしたが、とても分かりやすい説明でした。

講義の後は現地調査。足羽川沿い、山田地籍の田んぼに向かいました。
この日ざっと見ただけでも十数種と、たくさんの希少植物が生息していて、驚きです。

一番珍しいものでは、県域絶滅危惧Ⅰ種(環境省RBD絶滅危惧Ⅱ種)の
「スズメハコベ(写真④)」を見つけました。
「県内の水田で今やスズメハコベはなかなか見つけられません。県のレッドデータブックでは
コウノトリと同じ絶滅危惧 I に類ランクされています。」

参加したみなさんは、今まで気にも止めなかった小さい草が、希少価値の高い水田雑草と知り、驚きの様子。

 「ほんとすごい」
「何気なく目にしていたものが、こんなに希少ななものだったなんてびっくりした」
「もっといろんな人に見せたかった」(参加者より)
 と、ひとつひとつの名前を確かめていきながら、池田の田んぼが持つ力のすごさに感心しきりでした。

 「この環境は、自慢できますよ!」と、しきりに言っておられた先生の言葉に、改めて、
池田の豊かな自然に誇りをもち、農地保全の取り組みにも自信や意欲がわく研修でした。

福井県の植物の約1/6は絶滅の恐れがあり、
畦を除く田んぼの中の植物(水田雑草約120~130種)は1/4~1/5が絶滅危惧植物だそうです。

赤井氏のこれまでの調査では、池田町でその1/3(約10種類)が見つかっており、
「面積の割合から見ると実に多い」とのこと。
なんでも絶滅危惧植物は、中山間の棚田や湿田、川沿いの水田に多いらしく、
池田町では今後調査でまだまだ増える可能性が高いとか。

水田雑草が激減した原因として、除草剤の投入や圃場整備、畦などの草刈放棄、
外来植物の繁殖などがあげられています。
どれも人間の都合によるもので、考えさせられます。

除草ひとつとっても、除草剤の効き目と雑草の抵抗力はいたちごっこ。
薬による除草には限界があります。
さらには最近営農指導している「水管理の徹底」も、人工的な環境となるので、
絶滅危惧植物にとっては厳しい状況なのだとか。

現実問題として、営農と絶滅危惧植物との共存は大変難しい課題を抱えています。
赤井氏は「環境保全型農業を推進する池田町でなら(絶滅危惧植物と共存する農業も)可能かもしれない」
と期待もされていました。