田んぼの生きもの調査~春初夏編~

2009年5月30日(土)AM9:30~11:30 曇

『田んぼの生きもの調査~春初夏編~』を行いました。
今年で3年目となる生き物調査
本年度は『植物』をクローズアップし
人間と植物達の関係を見つめなおそうと考えています。

参加者は 集落営農の役員や環境農業に関心のある農家の皆さん。
池田町の7割が
『生命に優しい米づくり運動(農薬と化学肥料を極力使わない米づくり)』に参加しており
除草剤を使わない米づくりに 草刈りは欠かせません。

しかし ただ刈るだけではない もっと奥深い 人と草との関係を探しに
植物に詳しい赤井賢成さんを講師に迎え
一同 道沿い、川辺、山間部へと
時には腰をおろしながら じっくり見ることができました。

池田町水海地区の田んぼの周りで見つけた
植物たちを 一部 ご紹介致します。

『外 来 植 物』~人の往来や物流により侵入してきた植物たち~
●シロツメクサ(マメ科)
江戸時代後期に渡来。その後 飼料や緑肥として用いられてきました。
町内でも 各地に多く野生化しています。

●アカツメ草(マメ科)

5~8月開花し シロツメクサより背が高くなります。
町内ではシロツメクサに比べると量は少ないです。

●ハルジオン(キク科)

つぼみが下を向き 茎が中空です。
似たものに「ヒメジョオン」があり 
こちらはつぼみが上を向き 茎の中が詰まっています。
共に花は可愛らしいのですが 外来植物なので 草刈の際は刈り取ってOKです。

●フランスギク(キク科)

ヨーロッパ原産の植物です。
福井県内でも各地に分布しています。
最近は特に増えているようで 畦畔にも多く見られるようになってきました。

花が黄色い「オオキンケイギク」も最近増殖していますが
すごい勢いで在来植物の生育場所を壊してしまう為
見つけ次第 早く駆除しなければなりません。
こちらは外来生物法という法律で 特定外来生物に指定されています。
池田町では6月21日に「オオキンケオギク一斉駆除」を行う予定です。
ご都合よろしければご協力の程 宜しくお願い致します。

●ヘラオオバコ(オオバコ科)

花はつぼみの下から順に咲いていきます。
「最近よく見かけるのぉ」 と 参加者の声も聞かれました。

●ヒレハリソウ(ムラサキ科)

茎にヒレができるので その名がついたそうです。
葉を天ぷらにすると美味しく頂けるそうです。
食べて駆除できれば一番良いですね。

●カモガヤ(イネ科)

写真は 土砂崩れの跡に植えたものです。
災害復旧に植栽は必要ですが 自然環境に配慮した緑化が必要です。

つづいて
『在 来 植 物』~その地にもともと生育している植物~
●ヨメナ(キク科)

若い葉は塩茹でにてご飯に混ぜ 嫁菜飯として食されているそうです。
高級料亭でも出てくる食材です。

●ツルヨシ(在)

タネだけでなく 親株からツルが伸びて繁殖します。
ツルヨシの駆除方法は研究されていないそうですが
年に2回(初夏と秋)刈ると減らすことができるかもしれないとのお話でした。

●イタドリ(タデ科)

池田町では スイスイゴンボ と呼ばれています。
茎の太いものは 酸っぱく
皆さんも子供の頃 食べた経験があるのではないでしょうか。
このイタドリには 葉柄のつけねにある小さい穴から 甘い蜜が出ていて
その蜜を求めて 頻繁にアリが行き交う事で 害虫から身を守っているそうです。
蜜を報酬に アリにガードマンを頼んでいるわけですね。

●ノチドメ(セリ科)

この葉を傷口に貼ると血が止まるらしく 絆創膏代わりに使っていたそうです。
昔の人の知恵が光りますね。
ノチドメが畦畔に生えていると 他の草が生えにくくなる性質があります。
ノチドメを畦畔一面に生やすと 草刈の回数を減らすことができるかもしれません。

●チガヤ(イネ科)

先生は 背が低いタイプのチガヤを 町内の谷口地区で確認しているそうです。
ノチドメと同様に これを畦畔に芝のようにびっしり生やすことで
草刈の回数を減らすことができるかもしれません。

※町内では今年から ノチドメや チガヤなどの背が低い在来植物を
『カバープランツ』として 畦畔を緑化する試験を行います。
田んぼの草刈の回数を減らす取組みとして
高齢化が進む池田町の農業を救うべく
福井県立大学とタッグを組んだ研究が始まります。

●イチョウウキゴケ

葉の形がイチョウに似ていることから その名が付けられました。
環境省が指定する絶滅危惧植物ですが 池田町の田んぼでは普通に見ることができます。
これも池田町の環境が素晴しいことを示していますね。

山の方に行くと 道路沿いや川沿いに見られた外来種はだんだんと無くなっていき
外来植物ゼロの畦畔を見ることができました。

このような畦畔は あまり見ることができない
貴重な場所でして 畦畔の下の溝には 水が湧き出ていました。

このような水路は 最近はコンクリートにしてしまいがちですが
湧き水はきれいなだけでなく 水温も一定で
イモリや水草 田んぼの生き物を育むのに
とても良い場所なので 潰してしまわず 残していってほしいと
先生が語っておられました。

米作りをする上で
一、害草(困る草)・・・
カメムシの餌になる草、イネ科でイモチ病の発生源になる草
二、益 草>(役立つ草)・・・
肥料になる草、他の草の侵入や成長を抑える草、益虫の餌になる草、害虫を食べるカエルなどの生きものを鳥から守ってくれる草
三、ただの草・・・
営農にはいい意味でも悪い意味でも直接影響を及ぼさないけれども その存在自体が農村生態系を豊かにする重要な役割を果たす草

この3つを見極めることが大事とのことでした。

最後に神社の石垣で【ただの草】を目にする事が出来ました。
●ゴキョウ(キク科)

春の七草で親しまれるゴギョウ(母子草)は 農業にとって
プラスにもマイナスにもならない
ただの草 です。
しかし その【ただの草】が 昔からそこに生えてくれていることが
地域の自然にとって大事であり 池田の自然の豊かさを示すバロメーターとなる。
足元に眼差しを傾けて ただの草も大事にできる米づくりができたら素晴しいと
先生は語っておられました。

『生命に優しい米づくり』
人間だけではない 地球に住む全ての生きものにとって 優しい米づくり
まだまだ勉強してゆくことは 沢山ありそうですが その第一歩として
生きもの調査 あと2回(夏と秋) 今後の展開が楽しみです。

なお 生き物調査(無料)の参加者は 常に募集しております。
夏…8月 秋…10月 に予定しております
近くなりましたら 同ホームページにも募集をかけますので
興味のある方は ぜひ参加してみて下さいませ。