食Uターン事業


食Uターン事業は、家庭の生ゴミを「食品資源」としてリサイクルし、
牛糞ともみがらを混ぜ良質のたい肥に甦らせるというプロジェクトです。

池田町では早くから牛糞たい肥を利用し、有機栽培に取り組んできました。
そして、牛糞だけでなく、さらに地域資源との循環を図ろうと、平成14年11月、
たい肥センター「あぐりパワーアップセンター」が完成しました。
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各家庭では、水切りや食品以外のものの分別を徹底し、
新聞紙2枚程度でくるんだ生ゴミを指定の紙袋に入れ、
毎週月・水・金とゴミステーションに出します。

●池田町の松倉さん
「町に協力したくて」
笑顔で答えてくださった松倉さんは、
野菜づくりに、食Uターン事業から生まれるたい肥、土魂壌を使っているそうです。
生ゴミを出す際の、水切や袋に入れる作業などに対して
「なんもめんどうでねぇ(何も面倒ではない)」
と答えてくれました。
池田町民の多くは、畑にコンポストを置き
生ゴミを自分の畑でたい肥にしてしまう家庭が多い中
松倉さんの様に、食Uターン事業への協力意識が強い方は
池田町全世帯の約6割と高めです。
人と人とが繋がってこそ成り立つ食Uターン事業、
ゴミステーションまでの道端で
ばったり出会う
ご近所さんとの会話の中にも
松倉さんが生ゴミを出す楽しみが
あるのかもしれません。

松倉さん達、池田町民が出した生ゴミを
NPO法人環境Uフレンズが、
専用の回収車「あぐりパワー号」で回収しています。
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食Uターン事業による生ゴミ回収量は
平成15年度 81.0t
平成16年度 64.7t
平成17年度 87.7t
平成18年度 76.7t
平成19年度 83.7t
平成20年度 69.1t
(平成20年度の減少は「あぐりパワーアップセンター」の故障の為受入れができなかったことによる)

●池田町の長谷川さん
平成14年に始まった生ゴミ回収当初から
ボランティアスタッフとして参加していらっしゃる長谷川さん。
この生ゴミ回収の当番が回ってくるのを
毎回楽しみにしていらっしゃるそうです。
「池田町の隅から隅まで回れる、しかも景色が最高だ」
作業している というよりは 半日ドライブしている感覚らしく
「特に年配の方や町外から嫁いで来られた女性が多く参加しているので交流が楽しい」
様々な人と交流できる生ゴミ回収は
よく言えば大学の講義を聞くぐらい為になる!と話しておられました。
生ゴミ回収で池田町を再発見できる
だから、とても楽しみなんだそうです。

町内の生ゴミは回収されると、
「食品資源」として魚見の「あぐりパワーアップセンター」へ運ばれます。

ここで、牛糞、もみがらと一緒に、
たい肥(土づくり資材)
土魂壌(どこんじょう)』として生まれ変わります。

また、たい肥製造過程での発酵時の蒸気から有機の液肥
ゆうきの液肥 土魂壌の汗』もつくられるようになりました。

また、このたい肥とゼオライト等を混ぜた園芸用の土
『ゆうきの土 土魂壌入りの土』も開発、販売されるようになりました。

できあがったたい肥などは、
町内の農家や一般家庭で使用されるほか、
福井市のショッピングセンターにあるアンテナショップ
「こっぽい屋」でも販売されています。

そして町内では、このたい肥を混ぜ込んで、
安心・安全な農作物を作る取り組みが進められています
ゆうき・げんき正直農業特別栽培米など)。


●池田町の中村さん
発売当初から土魂壌をご愛用です。
中村さんの畑は昔
土砂崩れがあったらしく、土に石や砂が混ざっています。

けして良い土とは言えない畑ですが
「土魂壌を撒くと土がフワフワになって
草むしりもし易いんじゃ」
との事。
野菜を作るたびに土魂壌を使っている中村さんの畑は
トマトが赤くなりだしていました。

「この前、池田のいとこの家に行った時
 茄子がよぅけなってたんじゃ、
 なんでこんなになるんか聞いたら液肥を使ってたんじゃ」
いつか ゆうきの液肥も使ってみたいと
笑顔で話しておられました。



●池田町の谷川さん
谷川さんは、「ゆうき・げんき正直農業」で野菜を作り、
「こっぽい屋」に出荷している農家の一人です。

「ゆうき・げんき正直農業」とは、
化学肥料や農薬に頼らず、
土本来の力を引き出していく方法で野菜をつくる農業です。
現在約160名の農家さん達が取り組んでいます。
「土魂壌はやっぱ良いわのぉ」
野菜を作るたびに、必ず土魂壌を使用するという谷川さん
野菜ができはじめると、匂いをかぎつけてか
畑に猪がやってくるらしく
「今年は2回も入られたんじゃぁ」

「猪と知恵くらべしてるんじゃって」
そぅ言って苦笑いの谷川さん。
畑の隅っこで見つけた袋、

土魂壌の空袋の中には草が入っているそうです!
たい肥にして畑に撒くとか。
袋まで有効活用していらっしゃいました。
「次、何の野菜作ろうか考えるの楽しいんじゃってのぉ」
茄子が実る頃、
谷川さんは、もぅ次の季節のことを考えていました。



●池田町の山内さん
「じっとしてる間がないんやってぇおかげさまでぇ」

携帯電話を腰に備え付けた元気な74歳、山内さんも
化学肥料をつかわず、畑には土魂壌等のたい肥をつかい、
有機栽培でこっぽい屋に野菜や花等を出荷する
農家の一人です。

「有機栽培は虫と戦うのが大変なんやってぇ」
農薬や除草剤を使わない野菜づくりは
どうしても虫が寄ってきてしまいます。

『ウリバエ』と呼んでるこの虫が特に多いらしく
「灰や米糠を、はなさかじいさんみたいに撒くんやって」
薬の代わりに灰や米糠を撒くと
それを食べた虫が、はらくだりをおこして退治できるとの事。
色んな知恵を駆使して農業をしている山内さんの畑の横には
にんにくや玉ねぎが綺麗に干してありました。

「食」はまた「食」として戻り、
地域資源が「輪」となってつながっていきます。

単純だけどなかなか真似できないのが、この「輪」のしくみです。

生ゴミを分別し、食品資源として出す町民、
回収するボランティア、
たい肥に再生するパワーアップセンター、
たい肥で作物をつくる農家、
農作物や肥料を売る販売店、
そして良質なものを買い求める消費者。

どれが欠けてもこの「輪」は成り立ちません。

池田町が目指しているという「地域資源連結循環型農業」は、
「モノ」のリサイクルだけでなく、
この「輪」のしくみによって、
人々の暮らしや行動、
そして人の心もつながって、循環していくのです。