平成22年度『生命に優しい米づくり』最終審査会

2010年8月29日(日)午前9時~午後2時
池田町能楽の郷文化交流会館

 
記録的な暑さが続き朝から太陽が照りつける日曜日。
 
平成22年度『生命に優しい米づくり』最終審査会を行い
認証人数 池田町内 生産者の6割以上
認証面積 池田町内 圃場面積の7割以上が、
認証取得しました。
 

この最終審査というのは
7月8日と8月23日の2回にわたり
ライスアドバイザー等による現地審査を行い
その後の書類審査にて
栽培基準に達しているかを確認してきた資料を
学識研究者、行政関係者、そして消費者の
第3の目で確かめていただき
最終決定をしていただくというものです。

■審査委員長
吉岡 俊人さん(福井県立大学生物資源学部 教授)
■審査委員
仲谷 傳次さん(福井県農林水産部 食の安全安心課参事)
前野 正博さん(福井県丹南農林総合事務所農村整備部 整備課長)
赤井 賢成さん(環境省希少野生植物種保存推進員)
山本美紀子さん(NPO法人環境Uフレンズ 理事長)

まず、会議室にて
取り組み状況報告や、審査会の手順説明の後
書類審査として
審査対象圃場の栽培記録と
生育状況結果一覧を審査しました。
 
その後
バスに乗り込み、現地調査へと向かいます。

■生命に優しい米づくり認証の基準は簡単に表すと
「極(きわめ)」 堆肥による土づくりと無農薬・無化学肥料米栽培
「匠(たくみ)」 堆肥による土づくりと減農薬・無化学肥料米栽培
「真(まこと)」 堆肥による土づくりと減農薬・減化学肥料米栽培
「舞(ま い)」 土地に応じた土づくりと減農薬・無化学肥料米栽培

上記の各基準の田んぼに行き、みんなで審査しました

審査中、田んぼの上をたくさんの赤とんぼが舞っていました。
雄と雌が前後に繋がって、バランスをとりながら
お尻を地につけて「チョンチョン」と産卵する時期だそうです。
水中や柔らかい地中に卵を産み付けるので
稲刈り後の田んぼにも気を配って、
赤とんぼにとって産卵し易い場所をつくっていただくと
なおのこと生命に優しい米づくりとなるのではないかと
審査員の前野さん。

小さな生きものに詳しい前野さんは「ツユクサ」の話もしてくださいました。
池田町にはどこででも見かけますが
鯖江市や越前市ではあまり見かけなくなったというツユクサ。

池田在住の私は田んぼや畑でよくみかけていましたが
そんな珍しい草だったとは
驚きです!

ツユクサが元気に咲くとこができるのも
田んぼの畔に除草材をまかないからかもしれません
生命に優しい米づくりでは
田んぼの畔に除草材をまくと失格になります 

鳥獣被害対策用の電気柵の下でも同じく
除草材を使用してはいけません。

除草材をまかず草刈機で田んぼの畔草を刈るのですが、
これがかなりの時間と体力を消耗します。
そこで池田町では、背の低い在来種のノシバなどで畔の管理ができないか
『グランドカバー』と題し実験中です。
これが確立すれば、かなりの負担軽減になると期待しています。

次にむかったのは
JAライスセンターです。
普段あまり入ることのない施設だけに
みなさん興味深々です。

『生命に優しい米づくり』の
栽培方法や、使用した農薬毎に完全区分して
米を乾燥させます。
このライスセンターは除湿乾燥方式で
昔のハサ干しに近い味に仕上げます。

5月~9月は15℃以下の低温倉庫で
米を保管しています。

『生命に優しい米づくり』でつくられた米(極、匠、真)は
『うららの米』という愛称で販売します。
完全区分して保管されてきた米を精米して
お客様にお届けします。
その販売を担当しているのが『協同屋』です。
協同屋の佐野さん、うららの米への真正直な想いを
今日も熱く語ってくださいました。

乾燥~精米~出荷まで行き届いた流れですが
審査員の方々は厳しく審査していました。

昼食をはさんで
審査員が集まり
審査結果をとりまとめる作業にはいります。

そして平成22年産米『生命に優しい米づくり』審査結果を
審査委員長 吉岡俊人教授により発表していただきました。

■□■審査講評□■□
1、電気柵の下に除草剤を使用した場合原則不合格であるが、今回の事例の場合、ルールを知らなかった方が散布してしまった等、考慮すべき点があるので、次年度以降このような間違いが生じないよう指導を徹底することにして、本年はその他問題もないので合格としたい。
 消費者の立場からすると、除草剤を使わないこととなっているのに合格にすることは、極めてわかりづらいこととなるので、次年度以降このようなことが起こらないよう生産者への指導を徹底することが大切だ。

■□■ライスセンター・協同屋の審査結果□■□
ライスセンターの管理が、生産者が使用した農薬の種類によっても完全に区分して乾燥調整されていることには感心した。これからも、細心の気配りで良い米に仕上げて欲しい。また、除湿された風で乾燥するライスセンターというのは他にはあまり事例が少ないのだから、もっとPRした方が良いだろう。玄米の管理、精米・出荷の過程については、食べ物を扱っているのだという自覚を持って、ねずみや害虫などの対策を食品衛生上の観点から、念には念を入れて対応して欲しい。

■□■審査員のその他コメント□■□
1、池田の米は昔から美味しいと言われている。昔は昼夜の寒暖の差とかきれいな水とか言われていたが、今ではそれだけではなく生産者の皆さんや関係者の皆さんが力を合わせて作っているからこんないいお米になっているのだなあと審査会に出席させてもらって誇りを感じるようになった。

2、農薬や化学肥料を使わないというだけでなく、どのような思いでお米を作っているのかということが大切だと思う。そういう思いが田んぼの栽培管理に反映され、収穫されたお米の品質にも現れる。そのような思いを消費者に伝えることも大切だ。

3、米づくりは当然食べ物を作っているわけで安心して食べられる事が第一だ。この池田の米については、誰がどこでどのように作っているかはもちろん消費者の食卓までトーイサビリティがしっかりしていてすばらしい。このあと収穫までに、獣害対策、倒伏対策をしっかりやって欲しい。また、アメリカタカサブロウやコナギなどやっかいな雑草について、何事も適期に作業することが、被害を最小限に留める上で大切である。

4、生命に優しい米づくりとは何か。農薬は生き物を殺す。化学肥料は土の中の微生物の連鎖を断ち切る。土中の微生物連鎖は生命(生き物)生態系の基礎となるものである。有機肥料で栽培することはその連鎖を豊かにすること。土をさわり、土の臭いをかぐとその豊かさを実感できる。それが、池田の田んぼのトンボを増やし、鳥を増やし・・景色を作り、空気を作っている。そのような全体をお米の中に入れ込んで販売できるといいね。

5、皆さんがご苦労なさって栽培しているお米の収量や食味(タンパク質)、雑草の生え方、根腐れ状況などについて、田んぼ一筆一筆毎の診断を行って、情報をこの冬には一人一人にお渡ししたい。それを活用して、また次年度良い米づくりに活かして欲しい。

6、池田の生き物の状況を簡単に触れると、福井県の平野部ではすでにみられなくなってしまった動植物が池田では当たり前にみられる。午前中田んぼを回った時には、ツユクサの花が咲いていた。赤とんぼがスイスイ飛んでいた。一方、池田にはメダカはいない。それは環境が悪いのではなく、水の流れが早いからだ。メダカは泳ぎが下手な魚である。池田の魚の主流はもっと大きいアブラハヤ(ブラッペ)だ。また、平野部ではアマガエルはいっぱい鳴いているが、トノサマガエルの鳴く声は聞こえない。池田ではグゲゲゲゲグゲゲゲゲと鳴くトノサマガエルの声がいっぱい聞こえる。

■□■質疑応答□■□
生産者Q:最近、区画整理事業で、田んぼの区画を広げる工事が少しずつなされているが、その後の米づくりに影響はどれくらいあるのか。
専門家A:工事の際、もとの作土は集めておいて、後でまた作土として戻す工法が取られている。工事後の土壌は盤の方の土と作土がなじんでくるのにやや時間がかかるが、3年もすればかなり元に戻るだろう。その辺の事を確認しながら、生産の安定を図って欲しい。



後日、認証された全ての生産者には
平成22年度『生命に優しい米づくり』認定書が郵送されます。
生産者は、稲刈りの際、
その認定書を持ってライスセンターに行きます。


最終審査会も終わり
消費者のみなさまにお届けする日が近づいてまいりました。
丹精こめて育てたうららの米を
今年もどうぞお楽しみに!