田んぼの生きもの調査 ~夏編~
2009年8月1日(土)AM10:00~12:00 曇・雨
池田町上荒谷 農畜産物処理加工センター(集落センター)
春初夏編にひきつづき
今年2回目となる『田んぼの生きもの調査~夏編~』を行いました
本年度クローズアップしている『植物』を中心に
田んぼの緑が鮮やかな今回の夏の調査は
『農薬を散布した田んぼと無農薬の田んぼの生きものの違い』
をテーマに
集落営農の役員や環境保全型農業に関心のある農家、
消費者の方などが参加されました
降っては止み、また降ってきてはと、
雨の中ではありましたが
参加者の皆さんは、講師の赤井先生の説明を
熱心に聞いていました
池田町が推進する『生きものに優しい米づくり』認証基準とは
『極~きわめ~』無農薬・無化学肥料米(農薬は使わない)
『匠~たくみ~』減農薬・無化学肥料米(農薬4成分まで)
『真~まこと~』減農薬・減化学肥料米(農薬4成分まで)
『舞~ま い~』減農薬・減化学肥料米(農薬9成分まで)
この4段階に設定し、厳しい審査の元
農薬や化学肥料を押さえた米づくりに取り組むもので
今回調査した上荒谷地区の田んぼは
ちょっと歩けば『匠』や『極』の田んぼに出くわすことができる地区です
はじめに『匠』 そして『極』の田んぼへと足を運び
立ち止まって植物達を見ることができましたのでご紹介します
↑1.シバ(イネ科)・・在来種
「生命に優しい米づくり」の新たな取組みである
「カバープランツ」に使用する植物として
シバいわゆるノシバが池田町では注目されています
自生のノシバを使った畦畔緑化は全国初の試みであり
池田町の米づくりを支えてくれる要素として期待が高まっています
※町内では今年から、福井県立大学とタッグを組んだ
新しい取り組みが始まります。
高齢化が進む池田町の現状を踏まえ、
草刈の回数を少しでも減らそうと
自生する背の低い在来植物を使った
畦畔緑化と畦畔植生の維持管理の方法を考えていきます。
この「カバープランツ」の取組みの様子は
今後 同ホームページでもご報告しますのでお楽しみに!
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↑2.コナギ(ミズアオイ科)・・在来種
昔は染料や食料としても使われていたコナギ
天ぷらにして食べるとシャキシャキ感があり
タイでは市場に並ぶ食材です
「今年ひどいんじゃー」生産者の方が呟きました
深水を好むコナギは
長引いた梅雨のおかげで田んぼに増加し
匠、極など農薬を使わない(抑えた)田んぼでは
よく見かける植物です
ある田んぼでは↓このように・・・
稲に混じってコナギがびっしりと・・大変なことになっていました
コナギを抑える方法としまして
米ぬかによるトロトロ層により
コナギの根っこを浮かしてしまう方法があります
こんな厄介者扱いされるコナギですが
花はとても綺麗なのです
たった1日だけ咲く花は
淡い紫色でとても可憐でした
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↑3.イボクサ(ツユクサ科)・・在来種
湿った明るい場所を好むので
畔で見かけることが多い植物です
皆さんもおなじみのツユクサの仲間です
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↑4.オモダカ(オモダカ科)・・在来種
主にタネで増えるのですが
地下につけるクワイのような芽(塊茎)でも増えます
クワイをつけてしまったら大変です
見つけたら、クワイをつける前に、
タネを落とす前に
すぐに根っこから引抜くことが大事だそうです
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↑5.アメリカセンダングサ(キク科)・・外来種
&タウコギ(キク種)・・在来種
写真右、アメリカセンダングサは、最近池田町に増えだした植物です
もともと乾いた所に多い植物ですが
湿地にも適応したせいか
田んぼの中でもよく見かけるようになりました
でも生きています
とても背が高くなる植物で、
あと5・6年もすれば池田町の稲作に影響を及ぼすかもしれない植物です
写真左、タウコギは在来種とされていますが
3000年程昔、日本で田んぼを作りはじめた頃に
稲と一緒に入ってきた植物といわれているそうです
タウコギは農薬を抑えた田んぼでよく見かける植物です
福井県の田んぼではまだ多く生えていますが
兵庫県では数が減って
絶滅危惧植物に指定されているそうです
どちらも駆除する方法は特に無く
どちらも大きくなるので
小さい時に苦労して腰をかがめてとらなくてもよく
大きくなってから、でも、タネを落とす前にとるのがポイントとのことでした
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↑6.セリ(セリ科)・・在来種
春の七草のひとつで、美味しくいただくことができます
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↑7.カラムシ(イラクサ科)・・在来種
池田町のおじいちゃんおばあちゃんの間では
ヤマソウと呼ばれています
上部は草のように柔らかく、下部(根際)は木のように硬くなる、 と、
ある意味 中途半端な
ある意味 器用な植物です
もともと田んぼに生える植物ではなく
山際や道ばたに生える植物で、
池田町でも戦時中には
茎の皮をむいて繊維にしたそうです
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↑8.ウキクサ(ウキクサ科)・・在来種
池田町の田んぼに生える浮き草は4種類
特に後から出てくるウキクサという名の浮き草は
水面を被って田面に光が届くのを抑え
他の雑草が生えるのを防いでくれ
しかも 酸素を提供して根腐れを防ぎ、自分自身も緑肥として
田んぼに還っていき肥料になる、
稲作を助けてくれる植物です
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↑9.シャジクモ(藻類)・・在来種
農薬に弱く、全国的に見て絶滅危惧種です
しかし池田町の田んぼでは
あちらこちらの田んぼで見つけることができます
ウキクサと同様に緑肥になり、根(仮根)も浅く
稲作に大きな影響を与えることはありません
シャジクモが生える田んぼは、
農薬を減らしてお米を作っている証拠でもあり、
池田町の田んぼの環境を評価するうえで
指標になる植物です
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↑10.ヒナガヤツリ(カヤツリグサ科)・・在来種
カヤツリグサの仲間で茎の断面が三角なのが特徴です
池田町の田んぼには、なぜかとても多く
中ぼしが終わった頃に出てきて、1~2ヶ月くらいで枯れてしまいます
数は多いですが、体は小さいので
稲作に与える影響はあまりないのではというお話でした
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11.クログワイ(カヤツリグサ科)・・?来種
先生に勧められ、茎を半分に割いてみると
はしごのようなつくりになっています
茎を潰すと、プチップチッと軽い音がします
間に空洞ができており、軽い割に丈夫なつくりになっていました
クログワイは根っこがつながっており
草取りも根気がいります
稲作にとって少し厄介な植物です
田んぼの植物には珍しく多年草でもあり
見つけ次第早めにとらないとえらいことになります
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↑12.トキンソウ(キク科)・・在来種
こうみえてもキクの仲間で、菊の様な緑色の小さい花をつけます
ヒナガヤツリと同様に、数は多いですが
体は小さいので、稲作に与える影響はあまりないのではというお話でした
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↑13.アメリカタカサブロウ(キク科)・・外来種
池田町では、ほぼ稲と同じ高さまで大きくなります
タカサブロウには2種ありまして、
池田町ではタカサブロウが多いですが
この仲間には
在来種のタカサブロウと外来種のアメリカタカサブロウの2種類あって
池田町の田んぼにはなぜか
アメリカタカサブロウが多いそうです
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以上『匠』の田んぼでした
ここからは『極』の田んぼ調査です
今年から『極』を始めた方の田んぼには
あきらかに「クモ」の量が多く、稲と糸を上手に操り
自分の家を作っていました
クモは害虫を食べてくれるので
稲作にとって心強い存在です
稲穂が垂れた頃にはもっと増えるそうです
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↑14.ホタルイの仲間(カヤツリグサ科)・・在来種
池田町にはホタルイとイヌホタルイの二種類があります
共に多年草で、増えると厄介な植物です
田おこしで、地下茎が分断されるとさらに増えてします
見つけ次第、早めの駆除をお勧めしますとのお話でした
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と、ここで雨もいよいよ本降りとなり
泣く泣く田んぼでの調査は中断となりました
一同は 集落センターに戻り
ここからは先生が朝、池田町の田んぼで
採取してきてくださった
池田町に今も生きる
絶滅危惧種の貴重な植物を教えてもらいました
↑15.ホシクサ(ホシクサ科)・・在来種
今のところ絶滅危惧植物には指定されていませんが
福井県全域で個体数を減らしていて、絶滅危惧種予備軍だそうです
池田町では「極」「匠」の田んぼで時々見かけます
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↑16.ミズマツバ(ミソハギ科)・・在来種
全国的に減少が指摘されている植物で
環境省が作ったレッドリストにも載っています
大きくなってもせいぜい高さ5cmほどの小さな植物です
よく見ると葉の脇に小さな丸い実がついているのがわかります
池田町では点々と生えていますが
いずれも特別栽培の田んぼです
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↑17.スズメハコベ(ゴマノハグサ科)・・?来種
池田町内でも山田地区の1筆の田んぼにしか生えていない
大変貴重な植物です
「これほど貴重な植物が池田の田んぼにいる事を覚えて帰ってほしい
また、そのことを誇りにしてほしい、
そして、1筆でも多くの田んぼにスズメハコベが生えられるように、
これからも特別栽培にますます取り組んでほしい」
と先生はおっしゃっていました
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今回『匠』と『極』の田んぼで見つけた植物の中でも、
池田町の『生命に優しい米づくり』をする上で、
稲作に悪影響を及ぼす植物として
一、コナギ 二、オモダカ 三、ヒエ 四、アメリカセンダングサ
この四大植物が挙げられます
逆に、この4種以外の植物は さほど影響を与えません
そして、
池田町の田んぼには絶滅寸前の貴重な植物が
たくさん生きております
これらの植物が生えていることで
生きていける小さな虫達がいます
≪田んぼに生える草はすべて雑草でいらない草≫とくくってしまわず 、
米作りにそれほど影響を及ぼさない植物達は
田んぼに少しばかり生えていることを許してあげてほしいです
赤井先生たちの調査によると
絶滅危惧種の植物達は
極>匠>真>舞 の順に多く
環境に配慮した米づくりの取組が結果にも表れている
という事が見て取れます
すごいことです!自慢してください!と、
赤井先生がおっしゃってくださいました
今回は消費者目線でのお米に対するご意見も聞くことができ
雨ではありましたが
雨宿りの会話も楽しむことができました
『生きもの調査』最終回の10月には
「え!草ってこんなに綺麗な花をつけるの!?」
と、ビックリするような調査を行います
稲作をされている方、されていない方
お米や環境に関心のある方
植物が好きな方
どなたでも参加OKです
池田町の美味しいお米の秘密を探りに来てみませんか!